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水の商品化・民営化
タイの水の民営化と潅漑制度の改革(*1)

モントリー・チャンタウォン
プロジェクト・フォー・エコロジカルリカバリー(PER)

タイの水道事業
 水道法に基づいて設置されている首都圏水道公社(MWA)と地方水道公社(PWA)は、タイ国内全体で水道事業を展開する役割を担っている。しかしアジア開発銀行(ADB)からの融資で1995年に実施された水道局の民営化に関する調査や、国際通貨基金(IMF)、世界銀行、およびADBが1997年に行った融資の条件にしたがって、タイでは、MWAとPWAの民営化が進められており、各地で水道事業が企業セクターに売却されている。
 水道事業を民営化する理由として、政府の支出を削減できることや、人々に最も効率的に衛生的な水を供給できることなどが挙げられた。現在、水道事業は、天然の水源や、灌漑システム、地下水などから水を得ている。政府は水の利用(処理と分配)の決定において水道セクターを優先している。
 水道事業を民営化する際、政府は民間企業にライセンスを発行し、国内75県にそれぞれ割当てられた委託契約を請け負わせる。水道企業法に基づき、ライセンスを受けた企業は、各県において水道サービスを供給する独占企業体となる。
 その一方で、政府は水道事業の民営化に補助金を出しつづけている。例えば政府は、委託契約を結んでいる企業に対し、1立法メーターあたり僅か0.5バーツ(US$0.0119)で原水を売り渡している。さらに、これら企業は、灌漑システムや輸送インフラの整備コストの負担を求められておらず、したがって大規模な灌漑プロジェクトにつきものの社会影響についても責任を負っていない。
 政府と民間企業の間で結ばれた水の購入に関する契約では、政府が水の最低購入量を保証しており、実際の水の使用総量がこの保証水準を下回った場合には、保証水準と実際の使用量との差分の金額を企業に補償しなければならないことになっている。通常、この補償費用はタイ国民の税金から拠出されている。さらに、この契約によれば、利用者から水道料金の支払いを受けているのはライセンスを受けた企業であるにもかかわらず、水道インフラの拡大に要する投資は政府が負担しなければならない。そして、このインフラ拡大の費用は、タイの公的債務として積み上がっていく。しかも政府は、企業に水道料金の値上げを認める方向であることが明らかになっている。
 政府のすべての政策は、「自由貿易」という美辞麗句の下で実施されてきた。しかし、タイにおける水の民営化は独占を生み、市場における真の競争を排除している。このような状況の下、一般市民は短期的にも長期的にも水道事業の民営化から何の恩恵も受けられない。

国家による灌漑システム
 国家による灌漑システムには、ダム、堤防、そして運河が含まれる。灌漑システムは人がつくりあげた水のシステムだが、その大部分は今も水を利用者に届けるのに天然の水路を利用している。灌漑システムの建設および管理を担当しているのは王室灌漑局、エネルギー開発促進局、およびタイ電力公社である。
 灌漑システムの運営のあり方は、ここ数年の間で大きく変わった。灌漑システムの開発に対する考え方は、これまでの「農民の便益のために政府が供給しなければならないインフラ」というものから、「最大の経済的利益を保証する灌漑サービスへの投資」というものに変わってきている。後者のような認識に基づいて政策が策定された結果、農民は自分の農地で使った水の料金を支払わなければならなくなり、結果として灌漑システムの費用を負担しなければならなくなった。農民は、水を購入する費用を捻出するため、世界市場の需要に合わせて換金作物をつくるようになり、その結果、どんな作物を、誰のために栽培するのか、についての決定を農民自らが下すことができなくなってきている。このような変化は、ADBの農業セクターローン(ASPL)の下で1999年に定められた融資条件と(*2) 、1999年と2000年に実施された、第9次国家経済社会開発計画(2003〜2008)の策定段階における世界銀行の技術支援によってもたらされた。このような変化を促してきたのは、政府の歳出削減、水の利用効率の最大化、そして自由貿易の促進という大義名分である。


(*1)本ペーパーは、Chantawong, Montree "Water Privatization in Thailand: Situation and Imapct"からの抜粋である。
(*2)ADBは開発政策レターと政策マトリックスの中で、タイ政府に対し、水管理における構造改革の実行を借款供与の承認条件とした。具体的には、国家水資源政策の制定、水資源に関する法律を制定し、その中に灌漑コスト回収の政策を含めること、全国規模の水資源管理に対する国家水資源委員会の権限の拡大、3つのパイロット流域における流域管理委員会の認定、などを要求した。さらにADBは、民間企業が灌漑システムの管理を行い、灌漑地域の農民は水管理から発生するコストを分担するという、灌漑システムの民営化を要求した。

 

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